毎年行われる最低賃金の改定はだいたいこれくらいの時期に行われます。労働者にとっては今よりも給料がもらえる可能性がある意味で注目しますし、また経営者にとっては人件費増額に伴う人事施策にも影響する事から、特に最低賃金に近い待遇で雇用をしているほど気になる内容かと思います。
先日も厚生労働省から令和6年度の地域別最低賃金改定について全都道府県から回答があった旨が発表されました。各この記事では、今回の最低賃金改定のポイントや、企業がどのような対策を講じるべきかについて解説します。
最低賃金とは?
最低賃金は、労働者が1時間当たりの時給で考えており、必ず支払われなければならない最低限の賃金のことを指します。最低賃金を下回る賃金を支払ったとしても最低賃金額は支払う必要があります。これにより、賃金の低すぎる仕事がなくなり、また労働者の生活を守る仕組みとなっています。
最低賃金は全国一律ではなく、地域ごとに異なる「地域別最低賃金」と、特定の産業に適用される「特定(産業別)最低賃金」があります。そして「地域別最低賃金」は毎年10月に改訂されています。全都道府県で10月1日に同時に改定されるのではなく、例えば今年は東京等では10月1日に改定されますが佐賀県は10月17日、岩手県は10月27日に改定といったように一律ではありません。
今年の最低賃金改定の概要
2024年度の地域別最低賃金改定は全国加重平均で51円の引き上げが行われる事になります。この50円という金額に多くの方は驚いたのではないでしょうか。平成28年以降、毎年20円以上という改定が行われ、新型コロナウィルス感染拡大の影響で令和2年は1円だったものの、令和4年に初めて31円と30円台に初めて到達しました。そして40円台を一気に飛び越えての50円を超える改定を予想していた方はそれほど多くないのではないでしょうか。そして、全国加重平均が1,000円を超え1,004円となった昨年から、今年の改定により最低賃金の全国加重平均は1,055円となります。
以下が最低賃金のトップ3で、いずれも昨年と比較して50円増額となります。
1.東京都:1,163円(改定前:1,113円)
2.神奈川県:1,162円(改定前:1,112円)
3.大阪府:1,114円(改定前:1,064円)
企業が取るべき対応
最低賃金が改定されると、企業は改定後の最低賃金に基づき全従業員の時給を新しい基準に合わせる必要があります。パートやアルバイトのような時給者のみを対象としていると考えている方もいらっしゃいますが、月給者等を含む全ての従業員が対象となります。最低賃金に満たない賃金で働かせることは最低賃金法違反となり、罰則が科される可能性があるため注意が必要です。
また、最低賃金の引き上げは通常企業としては人件費(費用)の増加に繋がります。その為要因計画に影響する、あるいは予定していた昇給や賞与の支払いへの影響がある可能性もありますので、このタイミングで改めて今後の予定を確認しておく事も重要です。特に、労働集約型の産業、そして最低賃金に近い水準での雇用をしている場合早めに対策を講じることが重要です。
最低賃金に関する注意点と今後について
令和6年の最低賃金改定答申内容を見て、例年と異なり注目されるであろう内容は徳島県の改定内容です。令和5年の896円から980円と、84円の引き上げで全国の中で圧倒的な数字です。四国の中では令和5年までは香川県が一番高く、徳島県と比べると22円高い状況でしたが逆転する事になります。従来は全国的に数円程度の差しかなかった中で、ここまで大幅に上げた事を考える意味は大きいと考えられます。
労働力人口が減少する中全国的にどの業界も人手不足です。やはり人口が多い都市部に比べるとその他の地域は数と質両面で人の確保は今後いっそう大変になる事が予想されます。そのような状況を見据え来年以降徳島県のように独自の必要性から大幅な引き上げに踏み切る地域が出てくる可能性は十分あります。
企業としては人件費増に繋がりなかなか厳しいところではありますが、低賃金では人が集まらず結局は事業継続に影響します。それであれば地域として賃金水準を上げ、よりよい労働状況件を提供していくという考えを実行していく意義はあるのではないでしょうか。
最低賃金が上がる事で収入が増え、今度は扶養の枠で働けないといった声も恐らく大きくなってくるでしょう。国としても手を打っていくと考えられますがそれには時間がかかりますので、弊所では様々な観点から企業経営をサポートさせていただきます。
全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42150.html
令和6年度 地域別最低賃金 答申状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001297510.pdf
厚生労働省:必ずチェック最低賃金
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/