外国人技能実習制度は日本で技能を学び、その身につけた技能を母国に移転し、母国の発展に活かしてもらうことを目的とした国際協力の制度です。技能実習生は日本での経験を通じて職業能力を向上させ、帰国後に母国の発展に寄与することで制度の目的を果たしてもらうことが期待されています。
しかし、技能実習生が帰国後にどのようなキャリアを築いているのか、また日本での実習がどのように役立っているのかについては十分に知られていません。この点がわからないとやりっぱなしになってしまう恐れがあり、制度の目的を果たせているかどうかがわかりません。そこで外国人技能実習機構(OTIT)は毎年「帰国後フォローアップ調査」を行っています。その最新結果が公表されました。
調査の概要
「帰国後フォローアップ調査」は、技能実習生が帰国後にどのような就労状況にあるのか、そして日本での実習経験がどのように活かされているのか等の情報を把握する為に行われています。今回の調査では、令和5年9月1日から令和6年2月29日までの間に返送された回答が集計され、調査対象数31,666、有効回答数7,936、回収率25.1%となっています。回答を活かす為にはできれば回収率をもっと向上できると良いのではないかと思います。
調査結果のハイライト
この調査により、多くの技能実習生が帰国後に実習で得た技能を活かしていることが明らかになりました。以下は、調査の主要なポイントです。
- 技能実習の効果
- 技能実習期間を通じて学んだことが「帰国後、役に立った」と回答した人は92.1%
- 役に立った内容
- 「修得した技能」が76.0%と最も多く、「職場の規律」が67.6%「日本での生活経験」が66.8%
- 従事する仕事の内容
- 従事する仕事の内容が「実習と同じ仕事(48.5%)」又は「実習と同種の仕事(16.6%)」と回答した合計が65.1%
以上の回答を見た限りでは一定の目的を果たせているように感じます。技能実習生個人レベルではなく、彼らの母国が持ち帰った技能を活かして発展しているのかどうか、マクロ的な視点での分析も必要でしょう。
その他、昔から変わらない回答として、実習期間(在留)中の困ったことの具体的な内容に「家族と離れて寂しかった」があり、毎年50%~60%程度で推移しています。私達日本人が考える以上に家族との繋がりが強い技能実習生のメンタルヘルス対応は、引き続き重要なテーマと言えます。
今後の課題と展望
調査結果から技能実習生が帰国後にそのスキルを有効活用できていることがわかります。制度の成功を示す一方で様々な事情で就職ができない人が存在するのも現実です。これらの課題については引き続き検討が求められます。
現在の技能実習制度は今後「育成就労制度」に移行することが決まりました。育成就労制度は、特定技能の前段階としての扱いになる為、現在の技能実習制度よりも教育的ではなく実践的な制度としての導入と運用が期待されます。その為、技能実習生が日本での仕事経験を通じさらに成長できる機会や仕組みになることが望ましいでしょう。
終わりに
育成就労制度の導入は、日本と外国人労働者の双方にとってさらなる発展の機会となり得ます。実習実施者(技能実習生受入れ企業や個人事業主)や監理団体(事業協同組合)は、この新制度の下で、関係者が最大限の能力を発揮できるよう、適切な準備と支援を行っていくことが重要です。まだ施行は先ですが今のうちからできる準備を進めることは、間違いなく大事です。
今回ご紹介しました帰国後フォローアップ調査の詳細については、以下のリンク先の調査報告書をご覧ください。
- 外国人技能実習機構:令和5年度「帰国後技能実習生フォローアップ調査」